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令和2年度九日読書会 ―わたしのお薦めの1冊―(第4回報告)

開催日時 令和3年1月10日(日)14時~15時30分

会  場 熊本市民会館・大会議室

講  師 熊本県立大学准教授 

     五島 慶一 先生

演  題 『 野分 』~ 漱石の理想と現実 ~

 

 冒頭で『野分』を演題にした理由として、自身の卒論テーマであったこと、研究論文としてもあまり扱われていない作品であると話されました。12章からなる『野分』を白井道也を中心に、道也の主張は漱石の主張に繋がるものとして、4つの論点(「文学者」「趣味」「道」「高柳と中野」)から読み解かれました。白井は文学者であるのか、趣味は広義の学問であり社会の根本要素といえる、己の道について、高柳と中野の貧しき者と恵まれし者という立場の違いによる現実など専門的な解説でした。また、現在の新型コロナ禍の状況での問題にも通じるものがあるとのご指摘に、改めて現状を顧みる思いでした。そして、この作品が『二百十日』で描いた理想を引き継ぎつつ、それと現実との対立関係を描いており、同様に『草枕』での理想郷への現実の侵入という構図とも重なると説明を受け、漱石文学の奥の深さを感じました。(当日参加者は60名)

 

 

☆次回は令和3年2月6日(土)14時~ 市民会館・大会議室

 半藤 英明 先生 (熊本県立大学学長)『二百十日』~偉大なる阿蘇~

*感染予防対策をして開催いたしますが、中止せざる得ない時は、事前にご連絡いたします。