開催日時 令和3年12月11日(土) 14時~15時30分
会 場 くまもと県民交流館 パレア 9F 会議室①
講 師 熊本大学文学部准教授 屋敷 信晴 先生
演 題 『漱石の漢詩』~自然表現を中心に~
漱石は少年期より漢籍を熱心に学んでおり、その素養の高さを示すひとつとして、一高時代に療養中の正岡子規に送った漢文紀行『木屑録(ぼくせつろく)』を紹介。そこには青年らしい快活な漱石があり、子規とのやり取りの息遣いが伝わってきました。〝漱石〟の号も子規の『七草集』で使い始めていること、俳句のみならず漢詩による若き二人の交流から、学生時代、さらに松山、熊本時代、晩年に至る詩作の変遷を丁寧に辿ることで漱石の心境の変化に迫られました。特に熊本時代(明治32年)の「眼識東西字 心抱古今憂」が漱石自身を凝縮する表現であり、「人間固無事 白雲自悠悠」に晩年の「則天去私」の境地が表れていることを指摘。「雲」「水平線」といった自然表現にも着眼し、漢文学の思想、自然観をベースとしながら、創作形式は何れであれ、漱石の表現者としての才能を発揮していると評して締め括られました。
小説に比べると馴染みの浅い漱石の漢詩ですが、今後は漢詩を通して作品を鑑賞することに興味が湧くきっかけとなりました。
(参加者 75 名)
☆次回は 令和4年1月8日(土)14時~
熊本市民会館シアーズホーム夢ホール・大会議室
西槇 偉 先生 『永日小品』~漱石と魯迅 豊子愷をつなぐもの~