· 

令和4年度 漱石九日読書会 ~書籍『―アイラヴ漱石先生』より~(第3回報告)

(第3回報告12月17日開催)

第3回目は熊本大学文学部教授で、文学部付属漱石・八雲研究センターでも研究をされている坂元昌樹先生に、漱石ガイドブックにも掲載されている『吾輩は猫である』について“猫から見た世界”というテーマで、講演していただきました。冒頭では、ガイドブック刊行や現在実施している高校生によるFMKの”朗読館”の紹介もしてくださいました。

まず、先生が用意して下さったたいへん丁寧な資料に基づき、小説の背景、3つの視点という4項目について読み解いていかれました。まず、漱石がイギリス留学から帰国した1903年からスタートしました。帰国後の漱石は第一高等学校や東京帝国大学で講義をし、家庭的にも煩わしさを抱えて心身の不調に悩まされていた時期でした。その後、1905年1月に漱石作品の中でも有名な『吾輩は猫である』の第1章を『ホトトギス』に発表します。同時期には『倫敦塔』も『帝国文学』に発表していますが、『倫敦塔』については、令和2年度の読書会で坂元先生に解説していただきました。第1章で文名を高めた『吾輩は猫である』は、1906年8月まで11章が掲載されました。先生は、この作品が書かれた時代背景には日露戦争があり、挿絵や描写にも影響がみられると指摘されました。また、猫を語り手として人間世界が描かれており、猫の目を通して人物像の変容などの物語が展開し、正岡子規以降の「写生」という概念を散文形式において実践したものといえると読み解かれました。そして、初期の漱石作品の多彩な志向を示すその後の作品『草枕』や『二百十日』へ継承されていく原点となる作品であるとも解説されました。

寒い一日でしたが、皆さん熱心に耳を傾けられていました。(参加者90名)

 

次回は1月7日(土)14時~ 熊本市民会館・大会議室

 西槇偉先生(熊本大学教授) 『 漱石の俳句 』 ~吾輩も俳句してみよう~