令和4年度 漱石九日読書会 ~書籍『―アイラヴ漱石先生』より~(第4回報告)

(第4回報告1月7日開催)

 

第4回目は熊本大学文学部教授で、ガイドブック『アイラヴ漱石先生』の編集・刊行にもご尽力いただいた西槇偉先生に『漱石の俳句~吾輩も俳句してみよう~』というタイトルでお話いただきました。新年最初の読書会ということで、羽織袴でご登壇され、新年の思いを込められたご自身の俳句も披露してくださいました。

まずはじめに、漱石の新年を詠んだ俳句を紹介され、前向きな新たな気持ちを表した句や熊本で詠んだ句など新年に相応しいものであると解説されました。一方、不本意だが何とかやっているという様子が見られる句もあるとも指摘されました。次に、漱石の俳句と漢詩の関係を陶淵明や白楽天、白居易などの作品と比較されながら、読み解かれました。そして、漱石自身が『時事新報』(1913年10月2日付)のインタビューに雅号の由来が「蒙求」にあると答えていることからも、「蒙求」の漢詩と関わる俳句があると紹介され、その関連性を解説されました。最後に、服飾の描写がある漱石の俳句も季節ごとに紹介されましたが、各季節の句の背景や描写の意味など丁寧に説明していかれました。また、漱石自身も「美服が好きである」(大阪朝日新聞大正3年3月22日付)とコメントしており、派手な表現はしていないが、俳句にもその描写が表われているとも指摘されました。

今回、西槇先生は幅広い分野から、明治28年から大正5年までの多くの漱石俳句を取り上げられ、比較文学の視点から深い洞察のもと読み解いてくださいました。

改めて、漱石文学の中で俳句は大切な一部分として位置づけられているようでした。

年初に相応しい題材で、たいへん充実したひと時となりました。(参加者 76 名)

 

☆次回は2月12日(日)14時~ 熊本市民会館・大会議室

屋敷信晴先生(熊本大学准教授) 

『 漱石の漢詩文 』 ~子規との交流を中心に~