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令和4年度 漱石九日読書会 ~書籍『―アイラヴ漱石先生』より~(第5回報告)

(第5回報告2月12日開催)

 

第5回目は熊本大学文学部准教授で、ガイドブック『アイラヴ漱石先生』も執筆いただいた屋敷信晴先生に『漱石の漢詩文~子規との交流を中心に~』というタイトルでお話いただきました。

屋敷先生には昨年度の第3回読書会で、小説に比べると馴染みの浅い漱石の漢詩についてお話いただきました。今年度は、同じ時代を生き、深い結びつきを得た子規との交流を通しての漱石の漢詩を丁寧に解説されました。子規とは、一高の学生時代に出会います。そして、漱石が療養中の子規に送った房総紀行文『木屑録』や『七草集』を紹介されました。そこには、まだ若い青年の漱石の姿があり、〝漱石〟の筆名も子規の『七草集』で使い始めていることからも、その思いや、子規との率直なやり取りを知ることができました。

二人の間で10年近くも交わされた往復書簡のような漢詩には、次韻詩といえる漢詩もあり、詩作の変遷を丁寧に辿ることで、お互いを理解し尊重し合う、深い交流を感じました。

そして、漱石は熊本からロンドンへ留学する直前まで、子規とは漢詩を通じて心を通わせていましたが、漱石が帰国する前に子規は帰らぬ人となってしまいます。漱石が準備した追悼文が未定稿のままとの先生の説明からも、漱石の大きな悲しみが伝わってきました。ここまで漱石の漢詩を子規との交流を中心に読み解いていただき、改めて漢詩を通しての漱石作品という視点を得ることになったようです。 

(参加者 78 名)

 

 

☆次回は3月4日(日)14時~ 熊本市民会館・大会議室

熊本朗読会 『私の好きな漱石作品を読む』 

 ~元アナウンサーと現役ディレクター4名による朗読会~